といっても過言ではないリシャール・ミルの新作

といっても過言ではないリシャール・ミルの新作
「腕時計」というと、超複雑機構がいくつも載った機械式腕時計から、スマートウォッチやカジュアルウォッチにいたるまで、様々な形状を思い浮かべるのではないだろうか?その中で、あえて、強引かもしれないが共通点をあげるとしたら、ひとつには、「壊れやすい」という要素、というか、イメージではないだろうか。

実際に、全てがゼンマイで動く機械式腕時計でも、電池で動くクオーツでも、オーバーホールや定期的なメンテナンスが欠かせない。メンテナンスにだす理由やタイミングは様々だが、それだけ直径わずか数センチの中には信じられないほど精緻で繊細なパーツで構成されていることを鑑みればそれも道理であろう。

そんな腕時計の「暗黙の了解」に敢然と立ち向かい、予想だにしなかったモデルを開発、発表したのがリシャール・ミルの新作「RM-53 トゥールビヨン パブロ・マクドナウ」だ。

モデル名にもなっている パブロ・マクドナウという人物、世界最古ともいわれるスポーツ、「ポロ」の競技の世界では「生ける伝説」といっても過言ではないほどの有名な選手なのだ。

今でこそ「ポロ」は4:4でチームを組み、乗馬をしながらマレットと呼ばれる木槌状のスティックで、ホッケーのようにボールを運び、相手ゴールにシュートを決めると得点となる、というゲームとなっている。しかし、大元は紀元前6世紀のペルシア(現在のイラン)で生まれ、ゲームというよりは騎馬隊の軍事訓練として主に東方のインド、中国、日本へと伝播していったようだ。

現在のルールは19世紀にはいって英国がインドを植民地化した際に「再発見」され、本国に持ち帰って洗練させ、大英帝国の植民地を中心に再伝播していったもので、特に南米のアルゼンチンでは非常に盛んな競技であり、ポロのスタープレイヤーは、ハリウッドの映画俳優やサッカーのスーパースターと同じような畏敬の念と財産を集めるのだそうだ。

そんな背景のある「ポロ競技」のあたりの激しさは推して知るべし、であろう。マレットを振り回し、馬をコントロールしながら、ゴルフボール程度の大きさのボールを奪い合うのだ。ボディコンタクトやミスショットによる殴打、落馬等、想像しただけでも時計どころか体が壊れてしまうのでは…、と身震いしてしまう。

そのポロ競技のスター選手に、「競技中でも安心して満足してもらうための時計を作ろう」、と無謀しか思えない発想を、具現化してしまうところに、リシャール・ミルというブランドの「異次元性」を象徴しているのではないだろうか。